「なぜ、スギの葉は細く、サクラの葉は広いのか」(1/3)

暮らしのヒント

羽賀正雄(元)旭川営林支局長/東京やまと会顧問
日時:令和4年5月17日(火)
場所:ふれあいふるさと館2Fホール
主催:総務委員会

樹木の基礎=光合成

第4回卓話の時間にて、羽賀氏は「樹木が数千年も生きられるのは、光合成により移動しなくても生存が可能である。そのため、肥大生長・木化によって、強固な樹体を構築するとともに樹体の構造・器官が単純となり、損傷によるダメージが小さい」一方、「動物は食餌を求めて移動が不可欠である。そのため、心臓や脳を中枢とする精密機械化し、わずかな損傷でもダメージを受ける」と集約しました。
寿命の視点から樹木について述べていますが、今回は視点を変えて、針葉樹と広葉樹の相違から樹木の成り立ちを探索しましょう。

スギが先輩、サクラは後輩

テーマ「スギの葉…、サクラの葉…」は、「針葉樹(裸子植物)の葉…、広葉樹(被子植物)の葉…」をスギとサクラに代表させたものです。スギの葉とサクラの葉を並べると、形・大きさ・並び方などその違いに驚かされます。その相異はなぜ生まれたのか、その答えは数億年にわたる生物進化にあります。三億年前に針葉樹が、一億年前に広葉樹が出現しています。広葉樹の出現によって、動物を含めた生物相の多様化が進みました。

針葉樹と広葉樹―外観を比べる輩

針葉樹から広葉樹への進化を、幹と枝・葉と花・根などの主要器官で観察しましょう。
Ⓐ 樹形:針葉樹は、幹一本立ち。広葉樹は、幹が途中で分岐、株立ち、ツルに区分。

樹形4態
樹形4態

Ⓑ 葉の形態:針葉樹は、針葉・鱗片で細く葉脈無し。広葉樹は、広く様々な形。葉脈が発達。
Ⓒ 花の形態:針葉樹は風媒花で花弁無し。広葉樹は、虫媒花が主体で花弁・花序、色彩・臭い・蜜を整備。
Ⓓ 球果・果実の形態:針葉樹はマツカサ状の球果(広義で果実)。広葉樹は種子を果肉・果皮で囲む果実―乾果・液果など様々に区分。

スギ・ヤマザクラ

上段:スギ…右から葉―針葉・鱗片状/雄花・球果/風媒花のため受粉・種子散布とも風力。花弁(花びら)や果皮・果肉なし。
下段:ヤマザクラ…葉―広く薄く葉脈・鋸歯あり。花―虫媒花なので色彩、形、香り、蜜など工夫。果実・種子―果皮・果肉に被われ、成熟果を野鳥が運ぶ。
出典:河原、横山「日本の樹木」学習研究社2004

Ⓔ 種子の散布:針葉樹は風力。広葉樹は果実の形態により風力・動物の食餌、水流など。
Ⓕ 根の機能:広葉樹は支持根・呼吸根・寄生根など環境に適応し特殊な根が発達。

驚異の支持根(ガジュマル):アンコールワット
驚異の支持根(ガジュマル):アンコールワット

いずれの器官においても、針葉樹より広葉樹が複雑に変化し立地環境への適応力が大きくなっています。

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(会報誌:2022年07月)