「ここまでわかった認知症」 ―狂牛病からの教え―

会の活動報告

講師 国立精神・神経医療研究センター名誉理事長 水澤 英洋
日時:2月10日(水)14時~
会場:東京新潟県人会館 2階ホール

 講演会当日、都内では朝から小雪がちらつき午後からの大雪に備え不要不急の外出は避けるようにとテレビで伝えていた厳しい天気だったが、「認知症」についての関心の高さからか開演前から沢山の聴講者が席に着いていました。
 樋口昭文化委員長司会進行のもと、山本ミチ子実行委員長の開会挨拶と講師紹介があり、講師が壇上に上がり「今回皆さんにお話しする認知症研究の報告や話は少なく、かつ大学でも数年かけて学生に講義することを今日は2時間でお話しすることになります」という挨拶でスタートとなりました。
 日本の精神疾患についての研究が遅れていた50年前、「難病に国立研究所設立を!」との患者会からの直談判に対し、当時の田中角栄首相が100億円の支援を約束し、精神神経疾患について国家プロジェクトとしての研究機関がスタートしました。

会場の様子1
会場の様子①

 脳の病気は心と身体に現れる二つがあり、心の問題は精神科であり、身体は脳神経内科となり、重なりあったところに記憶などの高次脳機能に現れる疾患があるという。神経は身体中に張り巡らされているネットワークであり、その全てをコントロールしている重要な機関が脳であるという。その病気には内因(遺伝子要因)と外因(環境要因)とがあり、認知症(アルツハイマー病など)は、さまざまな原因で記憶など脳の認知機能に障害が起き生活に支障が起きること。現在、認知症の人は国内で約600万人と推定され増加の一途を辿っているが、その最も大きな原因は高齢化である。高齢になれば身体は老化する、しかし、物忘れと認知症は違う。また、がん細胞は増えるが、アルツハイマー病は細胞が減る、進行は緩やかな時間軸を辿るとの説明があり、変化に気づいたら早めに病院に相談することと、認知予防に良いとされる食品などが紹介されました。

会場の様子2
会場の様子②

 かつて世界中で問題となったBSE(狂牛病)はプリオン病の一種(アルツハイマー病と同じ一種)になるとのこと。「プリオン」(感染性を持つ異常たんぱく質)の研究は多くの病因解明と治療につながる可能性がある。患者数が少ないためその研究が難しいが、世界中が一つになって研究を進める必要がある。未来の医療の発展のために率先して世界に呼びかけてリードしていきたい、と今後の抱負を述べられました。最前線で重要な研究を続けておられる講師のお話を聞く機会を用意して頂いた文化委員会の皆様に感謝します、有難うございました。

(会報誌:2022年04月)