講話『日本酒の楽しみ方』(3/3)

会の活動報告

6.お酒の選び方
要は窓口を広くし、情報を集め自分の好みに合うお酒を見つけ出す事、またお酒を口にした時の唎酒印象を交換するための共通言葉として、唎酒の所で説明する最小限の唎酒用語(特に香りに関する表現)を理解する事が重要。また瓶の表ラベルや裏ラベル情報としての特定名称酒の区分、原料米、精米歩合、日本酒度・酸度(お酒の甘辛・濃淡の情報)も役に立ちます。

一度に多種多様なお酒に出会える試飲会(特に有料)はお勧め。郷土の酒博士坂口謹一郎先生の著書「日本の酒」(岩波新書)の巻頭文の一部を以下に紹介しますが『世界の歴史を見ても、古い文明は必ずうるわしい酒を持つ。すぐれた文化のみが、人間の感覚を洗練し、美化し、豊富にすることが出来るからである。それゆえ、すぐれた酒を持つ国民は進んだ文化の持主であるといっていい。一人ひとりの個人の場合でも、或る酒を十分に鑑賞できるということは、めいめいの教養の深さを示していると同時に、其れはまた人生の大きな楽しみの一つである』特に何も趣味がなければ、ただお酒を飲むばかりでなく、是非お酒を鑑賞できる心境になりたいものです。

7.唎酒(ききざけ)について

唎酒は永年営まれてきた伝統的な酒造りの工程やおいしさの秘密を学ぶだけでなく、蔵出しの酒の唎酒体験も今回の卓話の欠かせない楽しみでした。「唎酒」という用語は、本格的な品質鑑定から、気軽な「飲み比べ」感覚での楽しみ方まで、広い意味で使われています。「利き酒」や「きき酒」と表記される場合もありますが、「舌」=「味覚」だけで行うものではなく「視覚」や「嗅覚」も駆使します。

 1.色調、透明度
  一般酒、無濾過酒、熟成酒、濁り酒

 2.香
  上立香(うわだちか)、口中香(こうちゅうか)の評価

 3.味
  基本味:甘味、酸味、苦味、旨味、(塩味)
  味の評価:甘辛、濃淡、きれい、汚い、滑らか粗い
  後味の評価:残味、余韻

 4.香味の調和

また日本酒の香り・味成分とその表現の仕方(専門用語)が新鮮で、甘辛・濃淡の意味も理解することができました。

今回は、佐藤社長が持参の下越酒造ご自慢の下記の6銘酒を実際に唎酒体験しました。

1.「ほまれ麒麟」シリーズ

① 純米大吟醸、② 大吟醸、③ 特別純米

ほまれ麒麟シリーズ
「ほまれ麒麟」シリーズ
出典:下越酒造株式会社

2.「蒲原」シリーズ

① 純米吟醸・山田錦、② 純米吟醸・たかね錦

蒲原シリーズ
「蒲原」シリーズ
出典:下越酒造株式会社

3.「麒麟 時醸酒」

① Vintage 2007年
銘柄の由来 創業は1880年。中国に伝わる四霊と呼ばれる霊獣の一つ「麒麟」に由来し、良い事の起こる前兆、吉時に姿を見せる事から、人生のめでたい席で飲んで欲しいと念じて命名。

麒麟 時醸酒
「麒麟 時醸酒」
出典:日刊にいがたWEBタウン情報

8.おわりに

ここでご紹介したのは当日のスピーチの一端に過ぎません。紙数の都合で省略させて頂きましたが、詳細については下越酒造のHP県人会ウエブ広報: 酒造めぐり(2020年6月11日)を是非お読みください。貴重なお話を頂いた佐藤社長に改めてお礼を申し上げる次第です。

佐藤俊一氏・略歴

■ 蔵を構える阿賀町津川は、阿賀野川と常波川が合流する地点の段丘に開けた町。かつては北前船の寄港地の新潟と会津地方を結ぶ阿賀野川の舟運の川港として、会津と越後とを結ぶ会津街道の宿場町です。1886年に新潟県に編入されましたが、それまでの700年余は会津藩領だったため食文化も会津地方の色合いが濃い。

■ そうした歴史のある阿賀町に生育の佐藤俊一氏は、東京大学大学院農芸化学科を修了し、「炭化水素発酵に関する基礎的研究(酵母による炭化水素から有機酸生産に関する生理的並びに生物工学的研究)」で農学博士の肩書きを持つ。

■ 卒業後、国税庁に入庁、研究員や酒類鑑定官を歴任、在任中は東京局、金沢局、醸造試験所、そして関東信越局と17年間にわたって、酒類製造業者の製造技術や品質管理技術の向上などを支援。1993年、鑑定官の職を退き、同じ国税局鑑定官の経歴を持つ父・平八氏の跡を継ぐべく製造部長として蔵に入り、その後社長として現在に至っている。

(会報誌:2022年03月)