台湾を愛した八田與一


台湾を愛した八田與一

樋口 昭 氏 (東京新潟県人会常務理事・文化委員長)

 台湾省台南県烏山頭に「烏山頭ダム…八田ダム」の企画設計、施行監修の偉業について私「日本雨水資源化システム学会」に所属致し、同学会で平成3年から2回同ダムを訪問致しております。「八田與一 土木技師」の偉業に感動し尊敬致しており同氏を紹介致します。本ダムに一般観光客は少ないと言われています。明治の後期、日本の政策は本土の工業化、台湾の農業近代化に依る穀倉地化を揚げ、嘉南平野が指定された。八田與一はその調査を命じられ、(1919年)80人の要員と共に調査、測量を開始、約半年で1万6千㎞の給排水路、ダム堰堤の設計積算を完了。

烏山頭ダム(八田ダム)
烏山頭ダム(八田ダム)

 八田技師は土木技術だけでなく、水運用、大地運営等経営学をも備えた超人であった。翌年9月事業開始。巨大事業の施行監修に努め、超短期に完工させた。10年後の1930年9月竣工通水開始通水が開始された、轟音をたてて踊り出た豊かな水は嘉南の大地を潤した。嘉南の農民は「神の恵み、神の与え賜うた水」と歓喜の声を上げながら、一人の青年土木技師を思い出していた。以来、八田與一の名前は嘉南農民60万人の心に刻まれ永遠に消えることはない。不毛の大地広大な嘉南平野の隅々まで灌漑用水が行き渡ったのを見届けて家族とともに台北に転居した。八田技師と共に工事に係わった人々は同氏の銅像を作り起工の地点に据えてその功績を称えた。以後は台湾省総督府土木水利関連の要職を務め、軍の命により1942年5月8日、日本の占領下の「フィリピンの綿作灌漑調査」に渡航の途中米国の潜水艦の魚雷を受け、東シナ海にて死亡、享年56歳。本事業の完成は世界の土木界に驚嘆と称賛の声が上がった。烏山頭ダムは東洋では唯一の湿式土堰堤であり、その規模は世界一である。米国の土木学会は「八田ダム」と命名して学会誌上で世界に紹介した。八田與一の技能と日本の灌漑土木工事の優秀性を世界に証明した事業である。嘉南平野が緑の絨毯を引き締めたような大地となり、台湾最大の穀倉地帯となった頃。1945年に終戦となり、台湾は中華民国に返還され、日本人は台湾を去ることとなった。ご主人を戦争で奪われたご夫人は台湾を去る悲しみ、虚脱感から、夫の終生の事業であった八田ダムの放水口に投身され生涯を閉じた。嘉南の農民は、二つの死に慟哭。二人の魂が永久に烏山頭の地に留まり、嘉南大地も見守り続けることを願った。日本人が去り日本人の銅像、墓が壊されていく中で、嘉南の人々は日本式の墓石を作り、八田技師のすぐ後に建てた。

八田與一技師の銅像
烏山頭ダムのほとりにある丘からダム湖を見下ろしている八田與一技師の銅像(都賀田勇馬作)。
写真右奥にあるのは八田與一、外代樹夫妻の墓

(1946年12月15日)以来、嘉南の人々は八田與一の命日5月8日にはその功績を称え追悼式を毎年行っている。尚、追悼式には八田家等八田技師に縁の人々は参列されております。現在は、工事用水、民生用水、発電等多目的ダムとして、台湾の経済発展の基盤となり人民の文化的遺産になっている。
 本施設は、戦後の近代農業用水事業の象徴である愛知用水の10倍を超えた規模である。終戦直後、台湾に数多く建てられていた軍人や政治家の銅像は全て撤去された。然し、八田與一の銅像、墓石だけが現存し、毎年5月8日の命日には、周辺の農民が神のごとく慕っている。

筆者近況プロフィール
 長岡工業高校同窓会東京支部に所属。同会の同好会「山の会」の会員6名が東日本大震災の地、南相馬市で災害復興ボランティアを行う。震災10周年の節目に今月同市から、表彰を受ける。ボランティアの後も「相馬野馬追祭」に参加する等地元との親交を等社会貢献に努めている。平成30年11月より文化委員長を拝命。山本ミチ子副会長担当の指導の下で各委員の協力を得て、文化委員会の精神、伝統を継承堅持し発展に寄与。(会報誌:2021年11月)

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