「中卒で上京、豆腐屋に嫁いだ 波乱万丈の人生」


卓話の時間

「 中卒で上京、豆腐屋に嫁いだ 波乱万丈の人生」
山崎 ヤス氏(県人会副会長、元首都圏六日町会顧問)

 昭和16年、六日町で8人兄弟の6番目に生まれ、母親は小学校2年生の時に他界、長兄が病気で倒れて父親は大変でした。家が非常に貧しかったので、学校の学級費を親に言いづらく、中学生になると雪が降らない5月~11月までの間、朝4時起きで新聞配達をしました。
 朝起きるのに頼れるのは「目覚まし時計」だけ、7時30分頃に新聞を配り終えて家に戻り、急いでご飯にみそ汁をかけておなかにかっ込み、走って学校に行くという毎日でした。
 中学校を卒業後は、地元の農協の牛乳処理場に住み込みで就職しました。そこは、朝が早い代わりに終業は早かったので、上司の子供の子守りをし、そのお礼として毎日のように夕食を食べさせてもらいましたので、その頃のことは今でも親以上に感謝しています。
  
 19歳の冬のある日、知り合いの人が東京の品川に在る豆腐屋の息子との縁談を持って来ました。話は30分位でしたが、夏になった頃に「何もいらないからお嫁に来て欲しい」と先方からの連絡で、父からは「お前を嫁にやることにしたから挨拶に行ってこい」との言葉でした。「お金が無いから助かる」と承諾をしたとのことです。相手のことは全然わからないのに…。
 それでも私としては、東京に行けば大好きな美空ひばりや相撲が見られるという思いから躊躇はしませんでした。結婚するまでに会ったのはたったの3回きりでした。

 結婚後、3か月ほど経った頃、主人が身体の調子が悪いと仕事を休むようになり、風邪を引いたものと最初は思っていたのですが、それがたびたび休むようになると、当時、店員として勤めていた従兄弟の口から、これは昔からの主人の悪い癖だと初めて話をしてくれました。
 義母は主人と違い、ものすごく働き者でしたから、私は休む間もありませんでした。そうこうしているうちに、店にいた従兄弟が独立してしまい、主人は身体の調子が悪いと店を休みにすることが多くなってきました。その頃、店に機械が入って大豆の仕込みを前日に漬けるようになり、その漬け込んだ大豆が朝には物凄い量に膨れてしまい、捨てるわけにもいかず、その対策として知り合いに頼んで大豆を運び込み一緒に作ってもらったりしたこともありました。
 
 やがて破綻寸前にまで追い込まれて、何とかしないといけないと思案しました。「店を閉めるのはいつでもできる」と考え、家業を自分でやろうと決心しました。
 豆腐は何とか満足に出来るようになりましたが、油揚げはなかなか難しく、作っては捨て作っては捨ての連続で苦労しました。どのくらい捨てたか分かりません。そこで同業者の会合に出席し、頭を下げて悩みを話したところ、親切に教えてくれました。ほんのちょっとの違いで失敗していたことが分かり助かりました。
 要領を会得し、油揚げも徐々に上手くできるようになり、お客の評判も良くなり商売が順調に伸び、やれやれと思いました。

 ところが、晴天の霹靂、考えてもいないことが起きました。それは、店に税務署の調査が入り、結果、納税申告が悪質だということで物凄い追徴金の徴収をされました。当時の豆腐1丁の値段が15円という時代でした。財布はすっからかん。この事があって、すっかりやる気を失い、殆んど仕事をしなくなりました。今考えると、子供二人と義母が居なかったら、離婚をしていたかもしれません。しかし、その時に「こりゃだめだ諦めよう」と思ったら、不思議に気持ちが楽になり、それから夢中になって仕事に精を出しました。
 
 その後の主人は、相変わらず入退院を繰り返し、50歳になっても家でずーっと仕事をせず布団に伏せたままで、好きな本やテレビ、新聞を見るだけの状態が続き、79歳で亡くなりました。義母も94 歳まで長生きし、家で息を引き取りました。

 最後、やっと自分の好きなことをやれるようになり、何よりも子供(息子と娘の二人)を一人前に育て上げたことが私の誇りです。
 少しは余裕ができ、私のストレス解消法はお酒と美空ひばりです。疲れたと思うとすぐにマッサージを受け、好きな相撲取りが経営するちゃんこ屋でお酒をちびちびとやったりすると、疲れなど吹き飛んでしまいます。
 また、銀行の旅行などに独りで参加したり、美空ひばりの歌を聴きに追っかけのようなことまでやったりしました。どこで聞いたかテレビやラジオの番組から声が掛かるようなことがあり出演依頼もきました。それが縁で今でも大相撲の元小結玉龍さんや講談師の桃川鶴女さんなど有名人とお付合いしています。

 「笑顔を絶やさず 思いやりを持つということが大事」と思っています。と、締めくくられた。
(会報誌:2020年1月)

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