「俳句」と「川柳」はどこが、どう違うのか
私たちが、小・中学の頃から馴染んできた芭蕉、一茶などの俳句。川柳も俳句と同じ「五・七・五」の17音定型ですが、どう違うのだろうか。この素朴な疑問に応えるために、まず識者の「定義」を紹介しょう。
〈形式的違い〉・俳句には季語が必要ですが、川柳では特にこだわりません。俳句は主に文語表現で、「けり」などの切字が必要。川柳は口語が普通で、切字にこだわらない。
〈内容的違い〉俳句は主に自然を対象に詠む。一方、川柳は、人事を対象に切り取ることが中心。俳句は「詠嘆」。川柳は「ものす」などという。
本書の著者・若林柳一さん(本名・肇 元佐渡テレビ社長)は、NHK全国大会大賞など数多くの受賞実績を持つ実力派川柳作家。著者によれば、川柳の世界にも、「大衆川柳」と「文芸川柳」とあるが、著者の立つ「文芸川柳」は、健全なるユーモアと風刺精神を基本としているという。
本書は、風の章、花の章、海の章、夢の章の四章構成になっているが、最初の「風の章 ユーモアはビタミン」の冒頭三句をまず紹介しよう。
・通知表親に似てきて叱られる
・大脳の目方を辞書に測られる
・孫の名を読むには足りぬ国語力
著者によれば、昨今の「笑えればなんでもいい」という感じで、人を笑い者にするような句がままみられ、これが川柳だと世間に根付くことを危惧しているという。「川柳は人間がにんげんを楽しむ文芸である」これが著者の主張。
筆者は、「普段着の文芸」としての、本書全四章に掲げられた数多くの川柳句を存分に楽しむことができたが、著者とは同年のようで、「あとがき」の最後に掲げられた句──
・歳月に焚く篝火よまだ傘寿が心に響いたのだった。 (広報委員長 樋口 高士)
川柳 にんげんのうた
若林 柳一 川柳句集
新葉館出版
2018.1.1 刊