国宝「火焔型土器」の世界

暮らしのヒント
国宝「火焔型土器」と発掘された「笹山遺跡」の全貌

 現在、新潟県で唯一の国宝指定を受けている、笹山遺跡(十日町市・中条)から発掘(1982年・昭和57年)された縄文の「火焔型土器」。

 本書は、その「笹山遺跡」と「火焔型土器」の全体像を分かりやすく示した、縄文文化に関心を持つ人達にとっては、待ちに待っていたような好著である。全体の構成は─、

第1章 笹山物語
第2章  火焔型土器を解読する
第3章  雪と信濃川が育んだ文化
第4章 笹山縄文人の暮らし
第5章 笹山遺跡の今

 火焔型土器は、昭和11年(1936年)に、長岡市馬高(うまたか)遺跡で、始めて発掘されている。以来、津南町、十日町市、長岡市付近の遺跡などから出土していたが、笹山遺跡からの発掘は、馬高から46年を経た昭和57年のことだった。本書第1章では、その生々しい発掘ドラマを伝えている。

 「……7月7日から8日の朝にかけて、笹山遺跡周辺には雨が降っていた。8日朝の現場にうっすらと黒っぽくなっている部分があり、調査担当者と協議のうえ、その部分をさらに掘り下げたところ、火焔型土器№1出土。まさに恵の雨であり、微妙な色調の違いに気づき……果敢に掘り下げを実行した卓見に敬意を表したい。偶然が必然に変わった瞬間で、神のみぞ知るといわざるを得ない。」

 第2章では、梅原猛さんの国宝推薦時の言葉を紹介─「……縄文土器や土偶ほど優れた芸術品は日本の全芸術品を見渡してもない。……ここには、すさまじいエネルギーがあるが、それでいて、それは静謐な思弁が秘められているのである。」
石原正敏氏は、1962年、新潟県長岡市生まれ。
新潟大学大学院人文科学研究科修了。十日町市博物館・参事副館長学芸員。 (広報委員長 樋口 高士)


国宝「火焔型土器」の世界 笹山遺跡
石原 正敏・著
新泉社
2018.2.15・刊