カール・ベンクス『よみがえる古民家』

暮らしのヒント

 本書は、十日町市竹所(旧新潟県東頸城郡松代町竹所)に在住するドイツ人建築家・カール・ベンクス氏の「古民家再生」の活動を紹介する好著。大きくは4軒の建築例に基づき、カール氏の見事な古民家再生手腕を紹介し、その根幹となる「建築思想」を伝える。

 目次構成は
プロローグ:小さな田舎町の小さな集落
第一章:双鶴庵古民家再生の第一歩
第二章:イエローハウス新しい住民を迎えて
第三章:薪小屋カーブドッチ「薪小屋」に取り組む
第四章:社彩庵ひらしお150年前の建物が甦る
エピローグ:本当の豊かさを見つめるまなざし

日本の美再発見のブルノ―タウトの再来建築家

 カール・ベンクス氏は1942年8月、ドイツのベルリンで生まれる。カール氏が日本に興味を持ったきっかけは、父親の残したブルノ―タウトの書物と、日本の浮世絵。ブルノ―タウトは、ドイツ生まれの建築家。日本の建築美を高く評価したことで知られる。

 カール氏が初めて日本を訪れたのが1966年。日本のこの松代に移り住んだのが、1993年。「当時は日本各地に古い町並みがしっかりと残っていて美しかった。京都をはじめとして昔ながらの日本の風情を伝える建物が沢山ありました。」

 日本の高度成長とともに、そうした建物が次第に失われていく。失われていく古き良き日本の情緒を伝える風景に、カール氏は、ぎりぎり間に合う。ブルノ―タウトが日本の美を再発見したように、カール氏もまた日本の美に魅かれた。それが建築デザイナーとしての歩みにつながったという。

第2回安吾賞受賞
 安吾賞とは、新潟市が2006年に創設した「生きざま賞」。さまざまな社会活動・文化活動において、新しい時代や新たな分野を切り開き、勇気や元気を与えて、かつ共感をもって迎えられた個人または団体へと贈られる。
 カール・ベンクス氏は、第2回安吾賞、新潟市特別賞を受賞している。
(会報誌 2021年5月:広報・樋口)

・カールベンクスが手掛けた再生古民家で憧れの移住生活
・ドイツ人建築デザイナー カール・ベンクス
・古民家はこんなにカラフルになれる