人間国宝 三浦小平二

青磁の透明感にうかぶ思い出
人間国宝 三浦小平二

「自分しか成しえないもの、如何に独自なもの、オリジナリティが大切か」切々と――

 陶芸家故三浦小平二氏は佐渡に生まれ、東京芸大で彫刻の腕を磨き、苦労しながら東アフリカやアフガニスタンに取材旅行をした。異国の人々の暮らしを青磁の器や絵皿に取り入れる発想は、時を超えてなお新しく観る者を魅了してやまない。
 生前は国立市在住で、陶芸界の中心的存在として活動を続け、青磁に色絵を施すという独自の世界を確立し、平成9年に青磁の分野で初の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定され、平成18年73歳で惜しまれつつ亡くなられた。


青磁豆彩香炉「巡礼の道(サンチアゴ)」

 さて、青磁の青は釉薬の色ではなく、中にとけこんだ空気の厚みで青くなるのだという。100個作っても1個完成するかどうかという。それだけに国立のアトリエを拠点として44年間、青磁と格闘し続けた。
 小さなこだわりを捨てて、体をつかって努力すること、古典を学び、自然を学び、民族の歴史を学び、独自の表現を確立するための取材や材料の研究を重ねて来た。
 思い出は尽きないが、旅にも連れ添った竹子夫人(ママの森幼稚園園長)によれば「彼が園児によく言っていた言葉は、よく見て(集中して観察する)大きく(こだわらず見る)、ごしごしと(体をつかってやる)でした。そして子どもたちをいつもほめる、すぐれた教育者でもありました。」と語る。
 母校の佐渡高等学校でおこなわれた講演「私の歩んで来た道」では、次代を担う子どもたちに向かって、「ものづくりの原点は自分しか成しえないもの、つまり如何に独自なもの、オリジナリティが大切か」を切々と諭した。
 亡くなる前の最後の個展でお会いした時、まだまだ青磁の追求に執念を燃やしていると語っていた小平二氏の瞳の輝きが今も忘れられないという人がいる。


焼〆め「マサイ」

 佐渡に生まれ、佐渡の土を生涯大事にした陶芸家は、相川に「小さな美術館」(佐渡市相川羽田町10)を設立。小平二意匠の陶器グッズも多数売店で販売されており、ふるさと納税の記念品にもなっている。今年は小平二没後15年の特別展が開催しているのでぜひ訪れてほしい。
 亡くなった後、平成19年7月竹子夫人は作品30点を国立市に寄贈。又没後15年となった今年4月三浦小平二の作品を後世に残し、皆様に見て頂きいと願い、一般財団法人Musée Miuraを設立。ママの森幼稚園隣、五浦ハウス3階に記念館を開設した。

 国立での思い出や三浦夫妻がどのような人生を歩んでこられたか知りたいと思い、夫人にお話をうかがった。父五味重績は、農地解放と空襲で山梨と東京の家を失う。国立に転居、私のためにママの森幼稚園を設立、4年後死亡した。絵の先生だった小平二は、子どもの頃私と同じ「子供の科学」を愛読していた。草月流家元 勅使河原蒼風に青磁花瓶は南宋併華で青磁の頂点と教えられた事に運命を感じ、仕事を一生懸命やりとげようと切磋琢磨し戦友結婚をした。


中国客家にて

 昭和63年には、新宿西口で交通事故に巻き込まれ、脳挫傷、左腕と両足膝下骨折。作家生活は大きなピンチにあう。右手で絵を描き、粘土細工をしようと希望をもち、釉薬の研究と曼荼羅を描いた。仕事が落ち着いたふたりは、五味、三浦家に感謝して学校法人五浦学園改組。(岡倉天心の五浦海岸六角堂と同名にした)

 小平二は、父三浦小平にゆるぎない英才教育を受け、佐渡高校で優秀な教師、学友と生活し美術と英語に情熱を燃やした。島にくる芸術家、記者や外国人と会話をしていたので海外取材も自然体で楽しめた。
 「僕に出来るのだから誰にでも出来る」と研究データを公開して後進の若者にチャンスを与えた。
 五十年展終了後、心筋梗塞で倒れ死亡。三年後パリのギメ美術館で開催予定だった、自分史絵巻と彫刻展が出来なかったのは私の健康管理不足だったと後悔している。


西ネパールにて

 ゴッホの弟テオの様に、スケールの大きい自然児小平二の全てを、独自の作品を伝えてゆきたい。(談)
 10月9日~11月21日「くにたち郷土文化館」(国立市谷保6231)にて作品展が開催されます。
(2021年8月:広報 清水裕美子)

問合せ先:一般財団法人Musée Miura
〒186-0002 東京都国立市東4丁目3-29
☎042-572-3922

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