障害者支援施設建設の体験談

地域の活性化について
障害者支援施設建設の体験談

日時:令和3年7月13日(火)
齋藤 實 氏(東京村上市郷友会)

 当日は長引くコロナ禍と不順な天候のため、参加者はやや少な目と残念だった。最初に卓話の時間主催 及川総務委員長の開会宣言と細井副会長の講師紹介挨拶があり開演となった。


 村上市出身で昭和11年(1936年)生まれ。東京都警視総監と同姓同名の齋藤 實です。本日は卓話の時間にお招きを賜り光栄に存じます。2年前、村上市郷友会の「三面川の鮭を食べる会」にご参加いただいた新潟県人会の春日先生と中央大学で同期生であることがご縁となり、今回お招きをいただいた次第です。

 私は42年間教職生活を送りましたが、長男が知的障碍者としてこの世に生を受けたことにより、親亡き後の為に有志を募り障碍者のための福祉支援施設を建設しようと40代に決意しました。教員生活をしながら、真に無から有を生み出す無謀な決意でしたが、周辺の多くの皆様からのご支援で施設を完成することが出来ました。

 施設完成までの数々のドラマの一端をご紹介し、ご参考になれば幸いです。

 皆さんは「氷が解けたら何になる」という問いに対してなんと答えるでしょうか?
 常識的に「水になる」とお答えになるでしょう。正解ですね。しかし私の接している知的障碍者の中には「春になる」と答える方がおります。なんと感受性豊かな答えでしょう。これを間違いとは、私は言えないと思います。通常健常者といわれている人々とは、違った発想をする豊かな感受性を発揮する人々のためにも安住の居場所を建設しなければという決意を固めた次第です。

 当初は、東京都の担当者に相談したところ、親の手造り施設なんて不可能ですよと相手にされませんでした。昭和60年代に立川養護学校に在学する12名の有志で、建設資金、建設場所、社会福祉法人の設立計画を練り関係機関に働きかける作業を、日常の教職に従事しながら3年間の準備期間を要しました。

 都内での土地確保が困難のため、過疎地域ですが、名水の里として有名な山梨県白洲町(現在の北杜市)に4000坪ほどの土地を確保できました。近くにはサントリーのワイン工場やお菓子のシャトレーゼの工場もある環境に恵まれた場所です。

 問題は必要となる2億円の建設資金について大変な苦労があり必死の努力をしました。1億円の国と都の補助金、5千万円の福祉医療事業団からの20年償還の借入金、5千万円の自己資金計画を基に申請を受領していただき、地元に対する受け入れ準備に入りました。


 東京都の施設を山梨の地にもっていくことで、多くの問題もあります。地元に受け入れ態勢が整わなければ建設は不可能と思い、白洲町議会に施設誘致決議をお願いしました。子供達の医療費負担に対する不安感なども施設利用者の住民票は白洲町に移さないことを条件に誘致決議の同意を得ることが出来ました。

 この時期から地元の人たちとのコミュニケーションを大切に、農家のお手伝いをするなど、地域活性化にも努力しました。

 これで建設可能と設計準備に入ったところで、最後に山梨県が東京都の施設の受け入れには同意しないという難題が生じました。この問題は山梨県の利用者も1割受け入れを条件に、行政間の折衝を得て何とか難問をクリアーしていきました。
 特に行政間の折衝では人の「和」と「輪」の大切さを学び、何事にも屈してはいけない「為せば成る、なさねばならぬ何事も、なさぬは人のなさぬなりけり」という座右の銘の大切さです。

 昭和62年3月数々の生みの苦しみを得て「白洲いずみの家」の竣工式を迎えることが出来ました。男子20名、女子10名の利用者、職員15名の24時間の支援施設をスタートでしたが、現在30名の利用者が全員個室で、職員31名の体制で24時間の勤務体制で運営をしております。

 「白洲いずみの家」という知的障碍者支援施設を開設して35年を経過し、18歳で入所した息子も現在53歳となりました。この間の施設運営は苦労の連続でしたが、職員の退職者が少なく家庭的情味豊かな施設運営が実践されていることは大きな喜びです。職員は全員地元からの採用であり、食堂の運営でもすべて地元の食材を調達するなど、常に地域への経済還元と地域の活性化を心がけてきました。

 最後に、昔私が少年時代から信条としてきた、後藤新平の「人のお世話にならぬよう、人のお世話ができるよう、そして報いを求めぬよう」と、山本五十六の「やって見せて、言って聞かせて、やらせてみて、褒めてやらねば人は動かず」です。
 ご清聴まことにありがとうございました。

文責 広報委員 佐藤 勝(会報誌:2021年9月)

HP:白洲いずみの家

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