越後・佐渡 暮らしの歳時記

暮らしのヒント
豊かな自然と民俗の宝庫 ふるさと新潟の四季

「越後・佐渡 暮らしの歳時記」と題されている本書は──
 季節の移り変わりの中で、昔から伝えられてきたふるさとの年中行事、子供たちの遊びなどを中心に、越後・佐渡の人々の暮らしと、それを支えてきた心情、由来などをエッセイ風にまとめた好著。

 本書の構成は──、
・第一章 春 ・第二章 夏
・第三章 秋 ・第四章 冬
とシンプルな四季・四章構成。

1章23~24篇、計94篇。1篇毎に「見開き2頁」に、写真入りでコンパクトに収載。

 本書の内容は、もともとは、著者・駒形氏が、昭和62年4月~平成元年4月までNHK新潟放送で、「暮らしの歳時記」という題で放送した原稿を基にしてまとめたもの。著者によれば、「伝統的な郷土の生活文化、基層文化ともいえる大切な民俗、習俗をいつまでも残してほしい、というささやかな願いをこめながら語ってきた」。心の中で長く温めていたふるさとの原風景を一つ一つスケッチしていくような楽しみがあった、とも。

新潟県をくまなく歩いた駒形氏(元・新潟民俗学会長)

 著者・駒形氏は、1926年(大正13年)佐渡生まれ。昭和23年より、十日町、村松、新津南、三条の各県立高等学校勤務を経て、昭和61年、川西高等学校校長を定年退職。その間、県史編纂室長補佐等を歴任。新潟県民俗学会元・常任理事、元会長。

 筆者が十日町高校在学時(昭和28~31年)、駒形先生もその数年前から同校に在職(当時、十校は東校、西校と二校舎制となっており、先生から直接の授業を受けることができなかった)。ただし、当時、先生は、地元紙に妻有の民俗に関わる原稿を執筆しており、小林存著『中魚沼の物語』(S29/10 刊)に刺激を受け、民俗学への関心が芽生えた私がひそかに敬愛する存在であったことを思い起こす。
 本書94篇の中での文字通りの冒頭の一篇・「しみ渡り」は、最も好きな一文。私を一気に70年の「時間」の彼方へ連れていってくれるのである。
 駒形先生は、既に90歳代となっているが、村松在住で、いまだ健在。地元紙『妻有新聞』のシリーズ「雪国妻有今昔物語」欄で健筆を揮っておられる。 (広報委員長 樋口 高士)

主要著書
『こどもの四季』(国書刊行会刊)
『わらべ歳時記─越後と佐渡』(野島出版刊)


越後・佐渡 暮らしの歳時記
駒形さとし 著
国書刊行会 1992.5.15 刊