あさま山荘事件

卓話の時間

あさま山荘事件 佐藤 永久氏(東京広神会会長)

◆佐藤永久さんが警視庁に在職中の今から46年前に発生した「あさま山荘事件」(極左暴力集団〈連合赤軍〉のメンバー5人による人質籠城事件)に従事したときの体験談が披露された。
 連合赤軍は有名大学に籍を置く若者たちが革命による自らの理想国家の実現を目指し、そのためには武力行使も辞さない強行派だった。銃砲店を襲い、奪った銃で銀行を襲撃するなど過激な犯行を繰り返しながら、群馬県の山岳地帯のアジトに潜伏、そのアジトでは不適格と判断されたメンバーを『総括』と称して集団リンチを行い、同じ思想を掲げたはずの12人もの仲間を殺害した。
 逃走中の集団を追跡し、立て籠った群馬県のアジトに踏み込んだときの佐藤さんの心境は流石にビビったそうで、思わず胸の警察手帳に手をやり覚悟を決めたと実感のある話に引き込まれた。

◆1972年2月19日、警察の手から逃げ延びたメンバー5人が長野県軽井沢町の河合楽器の保養所「あさま山荘」に乱入し、管理人の妻(当時31歳)を人質にして立て籠った。「あさま山荘」は切り立つ崖の上に立っていて、下から攻めようとすれば犯人からの容赦ない銃弾が降り注ぎ、崖の上に回っても壁に開けられた穴から狙い撃ちされてしまう難攻不落の要塞だった。酷寒の環境における警察当局と犯人との銃撃戦の攻防や血まみれで搬送される隊員、鉄球での山荘破壊など衝撃的な様子をNHKテレビは計10時間にわたり実況生中継し、民間放送局を含めた合計視聴率は約90%に達し、全国民がかたずを飲んでテレビ画面を見守った関心事であった。真冬の軽井沢は、気温は氷点下10度余りの寒さに弁当はもちろん、靴まで凍った。犯人グループはライフル銃を警官隊に乱射し、山荘を包囲した警視庁機動隊及び長野県警察機動隊の人質救出作戦は難航、死者3名、重軽傷者27名を出した。

◆一方、待機中の機動隊員らが食べる様子をテレビで映された日清食品の「カップヌードル」が有名になり、これがきっかけで、カップ麺が一気に知名度を高めたという後日談があった。事件発生から3日目の21日午後5時半すぎ、犯人グループの中の母親が拡声器を使い投降するよう説得を試みたが、犯人グループからの反応はなく、人質の安否もわからなかった。膠着状態が続く中、そこで警察がとった作戦は、建物の解体に使われる鉄球で山荘の壁を破壊するという、今に語り継がれる「鉄球作戦」であった。警察は人質があさま山荘の2階、犯行グループが3階にいると予想して、山側からクレーン車を近づけ、玄関脇の2階と3階の階段を鉄球で破壊して、2階と3階を寸断することにより人質の安全を確保してから、警視庁第9機動隊が1階に、長野県警機動隊が2階に突入して人質を救出、最後に第2機動隊が3階から入り込んで、犯人たちを確保するという作戦だったが、人質は予想した2階にも1階にもおらず、実際には犯行グループと同じ3階にいた。そこで、警察側は重さ1.7トンの鉄球で3階の壁を壊して強行突入した。最後の攻防戦が繰り広げられて重傷者を出しながらも人質を無事に救出。犯行グループを全員生きたまま逮捕し、熾烈を極めた闘いは幕を閉じた。


事件当時の背景地図をバックに生々しい体験を語る佐藤永久氏

◆衝撃的だったのは、逮捕後の取り調べで、連合赤軍は「総括」と称し仲間14人を殺害、「自己批判」を強制し、その戒めにリンチを実行。あまりのむごさに、一般の人の心は「左翼」から離れ、理想社会を目指したはずの若者が、組織内の自由や人権平等を踏みにじっていたという事実は、高度成長を経て左翼運動が孤立したという事件背景であった。(総務委員会/広報誌 2019年2月)

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