沢口靖子さんほか有名女優さんたちのスタイリストとして30年

暮らしのヒント

卓話者:今井ゆう氏 東京やまと会会員

令和元年5月7日、テレビ朝日で放送のサスペンスドラマ『科捜研の女』で京都府警 科学捜査研究所、通称「科捜研」の法医学研究員として科学捜査を武器に凶悪化・ハイテク化する犯罪の真相解明を目指す主人公・榊マリコを演じる女優、沢口靖子さん。その沢口さんのスタイリストとして30年間も務めたという今井さんをお招きし、貴重な経験の一端をお聞きしました。

 今井さんの初の就職先は、「資生堂美容技術研究所」でした。情報部門に携わり、新製品開発用の基礎情報の収集を担当しました。そのため海外のファッション雑誌や専門誌、日本の古代色等々の情報収集と分析をしていました。そんな中、海外のファッション誌に掲載の「スタイリスト」に注目し、興味を持つようになったのが、この世界に入るきっかけとなりました。

 資生堂退社後、スタイリストを目指しますが、弟子入りするところも情報を得るところもなく、暗中模索で、若さにまかせ突進しました。スタイリストの仕事は、テレビコマーシャルやカタログ、雑誌やテレビドラマなどで、タレントやモデルが着用する衣裳、アクセサリー、小道具などをコーディネートし、時にはヘアスタイル、メイクアップなどのデザインもする、守備範囲の広い仕事です。

 仕事の流れは、依頼を受けると、編集者やディレクター、制作スタッフなどと綿密な打ち合わせをするところから始まり、企画書や台本を読み込み、デザインを起こしたり、衣装協力をしてくれるアパレルメーカーなどに交渉して、衣装や小物をレンタルし、コーディネートします。また、撮影中のトラブルへの対処も重要で、特にロケの場合、「風」「雨」「日差し」など予期しない事態にも冷静に対応できる感性が必要です。限られた時間の中で、良い作品ができるように地道な「感性」「情熱」と「根性」と「気配り」が必要です。沢山の人が一つのチームとなって企画に取り組むことになるので、周囲への気配りや協調性、行動力が求められます。数多くの著名な俳優など雑誌やテレビでよく見かける人たちと一緒に仕事をさせていただけたことには、とても感謝しています。

 沢口靖子さんとはテレビコマーシャルの仕事などで30年のおつきあいですが、7年ほど前からドラマ『科捜研の女』も担当しています。初期の頃の主人公マリコは、超素朴なスタイルで京都の街を駆け回っていましたが、現在は、お洒落で大人っぽい装いに変わってきました。パンツにジャケットを羽織るのがおなじみのスタイルで、あくまでも科学捜査員ですから、「シンプル」で「動きやすい」服装であることは外せませんが、マリコ役の沢口さんと綿密に話し合い、時には対立することもありますが、衣装のラインナップを決めます。

 マリコのテーマカラーである「情熱のピンク」を多用しつつも、「ここは毅然と立ち向かいたいから、黒でいきましょう」と、台本の内容に沿ったコンセプトを決めることもあるという。『科捜研の女』は〝最新の科学捜査テクニック〟と〝豊饒な人間ドラマ〟が絡みあうハイクオリティーなミステリーとして、テレビドラマでは最も長く続いている長寿番組です。

 京都府警を舞台にしていることから、イメージアップになったと京都府警から感謝状を受けたとか。連続ドラマで最長の歴史を誇り、安定した平均視聴率を記録している人気の秘訣は、「いろいろ語ることができない陰の苦労があります」と、今井さんは卓話を結んだ。

 番外で「紳士の身だしなみ講座」があり、「ポケットチーフにはどんな効果があるのか?」「折り方・合わせ方はどうすればいいのか?」などポケットチーフの魅力についての紹介があり、参加の紳士(?)から好評でした。ありがとうございました。

(総務委員会 2019年8月)