長谷川酒造株式会社

酒どころ新潟 酒造めぐり

長谷川酒造株式会社

長谷川酒造

長岡・摂田屋の地で「江戸」以来、銘酒を醸す

 戊辰戦争の際に河井継之助が西軍との決戦を覚悟して、長岡藩の本陣を置いた光福寺を左手に見ながら、長谷川酒造を訪問した。

長谷川酒造
天保13年の願上書

長谷川酒造の創業

 江戸時代ここ「摂田屋(せったや)」の地は天領であり、先祖の重吉が天保13年(1842年)12月15日に酒造りとお神酒の残りの酒販売の許可願上書を時の領土の管理者であった上野寛永寺に提出して許可された旨、長岡藩の酒造御用記に記されている。
 この創業時期については長谷川酒造が関係方面の協力を得ながら調査した結果、長岡の地に古くからあった蔵王堂の別当寺であった安禅寺が蔵していた「酒造御用記」の中に明記されていた。この安禅寺は既に廃絶されており、この記録が良く残っていたものだと喜びたい。

長谷川酒造
「女の酒蔵」の三姉妹

女の酒蔵

 現在長谷川酒造の酒造りを実質的に運営している責任者は長谷川葉子専務である。夫の道郎氏が社長であるが、その父親である信(しん)氏は参議院議員・法務大臣を歴任され、道郎氏自身も参議院議員であったため、長岡における酒蔵経営は素人であった葉子氏が務めざるを得ない状況にあった。葉子専務は必死に酒造りを学び、30年余りかけてここまで酒蔵を切り盛りして来たそうである。
 16年前の中越地震により二棟の酒蔵とレンガ造りの煙突が倒壊し、茫然自失の状態に陥った。種々思い悩んだ末に、とにかく三年間は酒造りを続けてみようと心に決めて努力したのである。スーパーに買物に行き、酒売場を見た時、他の酒蔵の酒を買うのは嫌だ、自分の蔵での酒造りは継続しなければならないと強く心に誓ったと言う。
 そのうち自分の後は誰がこの酒蔵を継続してくれるのだろうと考えるようになった。だが、長谷川家には三人の娘しかいない。葉子専務は外に出てしまっている三姉妹に後継ぎの意向を訊いてみたそうである。長女、次女は否定的な答えだった中、米国滞在中の三女の幸子さんが帰国して酒造りに参加してくれたのだという。そのうちに長女の祐子さん、次女の聡子さんも酒造りに参加してくれるようになり、母と三人娘による「女の酒蔵」になったわけである。
 残念ながら幸子さんは29歳で早逝してしまったが、今でも何か困ったことがあると、元気で行動的だった幸子さんだったらどうするだろうかと想像して決断することがあると葉子専務は話しておられた。
 

古参杜氏の技術の伝承で「手作業」の酒造り

長谷川酒造
澤中杜氏(奥)と鈴木杜氏(手前)

酒造りへのこだわり

 以前は他の地方から蔵人が来て酒造りを行い、シーズンが過ぎれば、その蔵人達は帰ってしまう形態であったが、15年程前から社員全員で酒を造ることにして現在に至っている。現在82歳の澤中杜氏から40歳台の鈴木杜氏にうまく技術が伝承されている。
 「手作業を大切に」をモットーとしている。精米された傷付き易い米を素手で丁寧に洗い、和窯を使って蒸し、小さなタンクで仕込むことを大切にしている。大きな鍋で一度に百人分のプリンを作る場合と、一人分をひとつひとつ作る場合では、自ずから味は違ってくるということは理解できるであろう。

長谷川酒造
仕込雫しぼり

 また、大きな樽の中に袋をいくつも吊るして、そこから滴る原液を集める袋絞りの方式に拘り、大吟醸酒や吟醸酒はこの方式を採用している。
 越後の酒は「淡麗辛口」と言われているが、葉子専務は「淡麗」だけでなく「麗しい酒」を造るように努力していることを強調されている。「麗しい酒」とは香りと味わいのバランスが取れている酒だそうである。

長谷川酒造
有形文化財の酒蔵母屋

建物のはなし

 長谷川酒造の母屋は明治19年(1886年)出雲崎の久賀権次郎氏によって建てられた。これは母屋の屋根裏より見つかった棟札に書かれていたものであり、このような棟札が見付かるのは大変稀なことだそうである。この母屋は2012年9月に登録有形文化財に認定されている。
 前述のとおり中越地震の際に、二棟の酒蔵とレンガ造りの煙突は倒壊してしまったが、六年前に一棟の蔵を再建した。

摂田屋のはなし

 前述のとおり摂田屋地区は江戸時代の天領であったという歴史をもっており、「醸造の町」と呼ばれている。味噌・醤油蔵が三蔵、酒蔵が二蔵、薬味酒の蔵が一蔵あり壮観である。 この地区でも以前は六つの蔵はあまり交渉はなかったようだが、最近は六蔵で協力し合って摂田屋地区を盛り上げて行こうという動きも出て来たそうで、今後が楽しみである。因みにこれらの六蔵はすべて登録有形文化財である。
 冒頭にも書いたが、小千谷の慈眼寺での和平談判決裂後、河井継之助が西軍(越後では官軍とは言わない。)との決戦を決意して、長岡藩の諸部隊を集めて本陣を置いた光福寺もあり、街歩きには格好の地区である。
 長岡以外の地域の出身者にはあまり知られていないが、旧長岡藩の城下町とは違う独特の雰囲気を持っているので、是非一度訪れることをお勧めし
たい。
(広報委員・大原精一)

長谷川酒造の銘酒

越後雪紅梅
越後雪紅梅(純米吟醸)

爽やかな香りと控えめな甘さ、そしてスッキリとしたフィニッシュ

越後雪紅梅
越後雪紅梅(純米大吟醸)

口にふくむと広がる上質な旨み、芳醇で優雅な香りがゆったりとした余韻を醸す

酒どころ新潟 酒造めぐり

長谷川酒造株式会社
新潟県長岡市摂田屋2-7-28
電話 0258-32-0270
HP:https://sekkobai.jp/

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